[小 説/RO小説/moe5]

P001 月凍える夜に / 2005-04-18 (月)

 篝火が燃えている。
 周りに集う影が見える。
 手には杯。
 発せられる声は歓喜に満ちる。
 杯の中には勝利の美酒か。
 響く勝鬨の傍らに剣は鞘と共に眠る。
 身を作る鋼は、火の恩恵を受けることなく冷たく、光の恩恵を受けて鈍く輝く。
 ただ、静かに栄光を帯びていた。
 そして、主人たちの歓喜に恐縮するようにそっと影を落としていた。
 心に光と影を抱きつつも鉄の沈黙を守って控える忠臣たち。
 彼らはひどく美しく、強く、同時に――

 寒そうに、寂しそうに、怯えるように、怒りを堪えるように、想いを抑えるように。
 何かを耐え忍ぶ……どこか切なく、儚いものに見えた。

 剣たちが見上げる夜空は深く澄んで星々をたたえる。
 地に吹く風は冷たく、身を切るが如く。

 ルーンミッドガッツ王国魔法都市ゲフェンは、十二月を迎えようとしていた。