俺の名前はメルリーウィ・ハプスブルグ。ルーンミッドガッツ王国のプロンテラ騎士団に所属する騎士で、騎士団の皆は俺のことをメルと呼ぶ。
しかし、それは世を忍ぶ借りの姿である。俺の真の姿は、この世界に混乱をもたらす悪現れるとき、颯爽と現れ疾風のように去っていく、通りすがりの美少女ネタ戦士ウェポンマスターメルだ。え?男じゃないのかって?それは、読んでのお楽しみ♪
さて、これから話す事は、俺がウェポンマスターになった時の話しで、まだ自分の事を僕なんて言っていた頃、姉のユキ姉と共に廃墟となった古城へ行ったときの話しだ。
この番組は、殺戮商人演劇部、ねこみみキャラバン隊♪ 萌えないゴミの日 101匹まーちゃんず♪ のネタギルドの提供でお送り致します。
「……ナレーション!」
「何ですか?」
「小説にCM入れるな!」
「良いじゃないですか、減る物じゃないし」
「使える文字数減るからやめろ」
「そう言えばそうですね、それでは続きをお楽しみ下さい」
思い立ったが祝日で商店街が軒並み閉まってるルーンミッドガッツ王国の首都、プロンテラ。その街の外れにある建物の二階に住む住人に、いつもと違った朝が訪れた。
ドンドンドン。
「………メル~?お…事入ったわよ……メルってば……」
どこかで、僕を呼ぶ声がしているような……。
「……もう……。…当に朝に弱……だから……。それじゃ、勝手…入らせてもらうか……」
カチャリ……。
どこかで、金属の当たる音がした気がした……その瞬間。
バキッ!と板が砕け散る音が鳴り響く。
それと同時に頭に鋭い痛みが走り、目覚めかけた筈の僕の意識を再び暗闇に引き摺り込もうとした。
「……気持ちよさそうに寝ちゃって……。どうやって起こそうかしら」
薄れゆく意識の中で、実の姉の声を聞いた気がした。
……が、意識が消える前に、顔に冷たい何かが当たるのを感じ意識を取り戻し始める
「……!……んーっ!んーっ!………ぷはぁ……。はぁーはぁー」
僕は、すぐさま起きあがり、顔に被された濡れた布をはぎ取る。
「ユキ姉、なんて事するんだよ!死んじゃうじゃないか!」
そういう僕に。
「あら、メルが起きないのが悪いのですよ」
と天使のような笑顔でそう答える……が、その笑顔とは裏腹に、手にはドアをぶち破るのに使われたと思われるソードメイスと呼ばれる鋼鉄製の鈍器と、絶対ばれない保険金殺人のしかたという本が握られていた。
「……本気で僕を殺そうとしてなかった?」
僕の視線の先にある物に気付きながらも、変わらぬ笑顔で
「そんなわけないでしょ。そんな事より、騎士団からお仕事の話しが来てるから、急いで支度をして一緒に来なさい」
「え、僕も?」
「ええそうよ、話しは騎士団に行く途中に説明するから、早く準備をしなさい」
ソードメイスを腰の留め金にとめながら、僕を急かした。
僕が準備をしている間に、ユキ姉が小さく「近衛兵に握らせるお金が余ったから、後で何か買おうかしら」と言っているのが聞こえた。
あのまま気を失っていたら、水に濡らした布で窒息死させられた後、川にでも捨てられていたのかも知れない……。ぶち破ったドアの事は、お金で解決するつもりだったのだろう。
「ふ~ん、古城で多発してる冒険者の行方不明の調査なんだ」
騎士団へ続く道を歩きながら聞いた話しを要約して答えた。
「そういうことね」
「けど、どうして騎士でもない僕に依頼が?」
ユキ姉のように修道院でも高位な地位にある聖職者への依頼なら分かるのだが……。
「騎士団長のイクスさんから、人選は私に任せるって言われたからよ」
とにこやかに笑いながら答える。
「騎士団から僕への依頼じゃなくて、ユキ姉の判断なの!?」
「私に一任されたのだから、私の意志は騎士団の意志。だから私がお願いすればそれは騎士団からの依頼と同じなのよ」ほほえみを崩さずそう答える。
「………他には誰に依頼してあるの?」
嫌な予感を覚えながら、そう聞いてみた。
「他には依頼してないわよ。私とメルとイクスさんの三人だけよ」
「ちょ、ちょっと待ってよ。冒険者が多数行方不明になってるって言う場所なのに、なんで三人なの!?」
あまりの内容に慌てて問いただすが
「人数多いと支援が面倒でしょ?」
と何を当たり前の事を聞くのといった感じに答える。
その後「目撃者が少ない方が後々楽だし」と小さな声で付け加えていたのを、僕は聞き逃さなかった……。
そうこう話しながら歩いてるうちに、僕たちは目的の建物に着いた。
建物の外には、今回の依頼をユキ姉に持ってきた騎士団長の一人であり、僕の剣技の師匠であるイクス師匠の姿があった。
ユキ姉を見つけた師匠が声をかけてくる。
「こんにちは、ユキ」
「こんにちは、イクスさん」
軽く挨拶を交わす二人。
「今日は一段と綺麗だよ」
「あら、ありがとうございます。けれど、褒めて頂いても何も出ませんよ?」
「あなたが居てくれれば、他には何も要りませんよ」
「嬉しいですわ」
そう言った後に照れたように笑う二人。
こいつら完全に僕の事忘れてやがる。
「こ・ん・に・ち・わ、師匠!」
二人の世界を破るように、大きな声で挨拶をする。
「お、メルは相変わらず元気が良いな」
今やっと気付いたと言うような表情で、そう答えてくる。
「ユキ姉口説くのは後回しにして、さっさと調査に向かおうよ」
「そう焦るな、メル。まずは、今回の依頼についての説明をしないとな」
と言う師匠に対し
「大体の説明でしたら、こちらに来る途中で説明をしておきましたわ」
とユキ姉が答える。
「そうですか。なら、確認程度に簡単な説明をしましょう」
「え~、もう説明はいいよ~」
そういう僕に、「まー聞け」と言って話し始める。
その内容は、ほぼユキ姉に聞いた事と同じだった。
「今回は、5つのチームが調査に当たっている。一チームに幾つかの物資が支給されているから、今からそれを渡すので一緒についてきてくれ」
そういって、僕たちを倉庫に連れて行った。
倉庫に着き、師匠が係の者に用件を告げると幾つかの物が運ばれてきた。
一週間分の水と食料、治療用の薬草などの入った袋が3つ。
そして、ペコペコと呼ばれる輸送用の大きなダチョウのような鳥、白い犬、そして猿が用意された。
「名前は、ナゲット、パトラッシュ、LODです。そしてこれが動物たちの餌です」
そう言って、赤と青と白の3色の団子のような物を渡してきた。
「………ちょっと待ってよ、ペコペコは良いとして、犬もまだ認めてもいいよ。けどどうして猿がいるのよ猿が!」
そう激怒する僕に
「メル、お供は大事にしないといけないわよ?」
そう諭すように言うユキ姉。
「お供って、どうして人じゃなくて、動物を連れて行かないと行けないのさ!」
「鬼退治はこうと決まっているのよ」
「鬼退治ってなに!?」
そう疑問を投げ続ける僕に、師匠が言った。
「メル、そんなことより、これを装備しなさい」
そういって、手渡されたのは、コスプレなどに使われる、頭につける青色のネコミミのヘバンドだった。
「なっ!?なんでネコミミなんて着けなきゃいけないんですか!?」
「大人の事情って奴だよメル」
「大人の事情って……」
と言いながら他の二人を見て言葉を失った。
そこには、どうみても似合わない黒色のネコミミをつけた師匠とノリノリで黄色のネコミミを着けているユキ姉の姿があった。
「私も恥ずかしいんだ……」
そう言って後ろを向く師匠。その肩は微かに震えていた。
「そこまでして着けなきゃいけない大人の事情ってなんなの!?」
僕の師匠に向けた質問に、後ろからユキ姉が答えた。
「メル、スポンサーの提供する物を拒んではいけないのにゃ」
その時の僕には良くは分からなかったが、ユキ姉の後ろに見えた「大人しく装備しろ」というカンペの文字を見て逆らえずに装備した。
[小 説/RO小説/moe6]