無事に場所を借りられた僕たちは、宿屋裏の広場で向かい合っていた。
「メル、準備は良いですか?」
その言葉に、頷きながら。
「いいよ師匠」
そういって手に持った槍を地面に突き刺し、腰の鞘に左手をかける。
「それでは、始めましょうか」
そう言った師匠の前には、小さなテーブルが置かれ、その上には、バックラーと呼ばれる丸い鉄製の盾が裏返しに置いてあった。
師匠が左手で右手の拳を押さえながら右腕を後ろに引く。僕はその動作に対し右足を少し後ろに下げ腰を落とす。
「行きますよ!」
その師匠の言葉が終わると同時に動き出す二人。
『最初はグー。ジャンケン、ポン!』
その言葉が終わると同時に右拳を突き出す。
僕はグー、師匠はチョキを出していた。
瞬間僕は右手で鞘からサーベルを抜き斬りかかる。しかし、師匠はそれより早く机の上のバックラーを取り、僕の一撃を難なく受け止める。
「遅いですよ」という師匠に「準備運動ですよ」と返す。
そして、再び構えをとる二人。
『最初はグー。ジャンケン、ポン!』
僕はパー、師匠もパーを出していた。
『アイコで、ショ!』
チョキとチョキ。
『アイコで、ショ!』
チョキとグー。
その瞬間、武器を持っているとは思えないスピードで右手を振るう師匠。
盾を手に取るには間に合わず、思わず左腕を上げてガードをする。しまったと思った瞬間。
ピコッ!☆
という軽快な音が鳴り響く。
「な、な、な、なんですかそれは!」
「あ~これか?ピコピコハンマーとか言う物らしいよ」
そう言って、黄色の柄の先に赤いハンマー状の物がついた武器を振り回す。
「モノラシイッテ」
凄く棒読みに言う。
「いや、つい最近知り合った栗色で跳ねっ毛の錬金術師に貰った武器だから良くはわからないんだ。軽いから攻撃速度はあがるのだが、いかせん威力がな~」
と本気で悩む感じで言う。
「師匠~、それってどう見てもおもちゃだと思うんですけど……」
「……あ、やっぱりお前もそう思うか?もしかしてこれもかな」
そう言って、ピコピコハンマーを机に置くと、腰の辺りから長さ一メーター程度の何かを取り出す。
それは、長さが一メーターぐらいの紙を、五センチの間隔で谷折りと山折りを繰り返して蛇腹状にし、手に持っている辺りには布を巻いて持ちやすいようにした物のようだった。
「これどう思う?」
「何なのですか、それ」
「ハリセンとか言う武器らしい」
そう言って、ハリセンと呼んだ武器を振り回す。
「それも、あまり威力なさそうですね……」
「そうかな」
と言う言葉が終わると同時にその武器を僕の顔に向けて振り抜いた。
ベチッ!
「イターーーーーーーーイ」
そう叫んだ後、顔を押さえてうずくまる。
「お、結構威力あるな」
その言葉を聞いてむっとした僕は、すっと立ち上がり机にあるピコピコハンマーを手に取り
「いきなり何するんですか!痛いじゃないですか!」
と言ってピコピコハンマーで殴りかかる。
「いや、威力なさそうって言うからちょっと試して見ただけじゃないか」
と攻撃を両腕で防ぎながら笑ってそう答える。
「そう言うことは、自分で試して下さいよ!」
と言い、受けるのを辞めて逃げる師匠を追いかける。辺りにピコピコ音が鳴り響く。
「いや、痛かったら嫌だし」
「僕も嫌ですよ!」
その後、日が暮れるまでピコピコハンマーとハリセンを使った死闘(じゃれ合い)が続いたのであった。
[小 説/RO小説/moe6]